骨髄幼若細胞(顆粒球、赤芽球)の判定基準標準化・最終案
日本検査血液学会
現在までに実施した、末梢血好中球、桿状核球、分葉核級の鑑別、赤血球形態表現・判定基準の標準化とは異なり、分化・成熟を示す血液細胞系列をある基準で数種類に分類することになる。また、末梢血中より塗抹の条件により、同一の成熟過程にあってもさらに細胞の大きさ、外形、などは大きな変動を示す。従って、あまりに厳密な基準を作成しても、適応に迷うことも多いと推定される。また、どのような基準であっても、当然その分類基準の間の成熟過程を示す細胞は常に存在するため、あまり細部にこだわって分類することは再現性の低下を招き、臨床的な意義に乏しいと考える。血液形態標準化小委員会の目的とする再現性のよい検査結果(分類結果)を得るためには成熟過程の特徴を示したときに分類することに主眼をおいて以下の最終案を提唱する。
 
【骨髄中幼若顆粒球・赤芽球の鑑別、最終案】
細胞の鑑別に当たっては、下線部分の部分を主要な鑑別点とし、観察する標本中の細胞の分化・成熟の過程を把握した上で分類する。 N/C比については、細胞全体に占める核の面積比とし、その比率は図に従う。
 
1)幼若顆粒球・赤芽球の成熟段階の名称
顆粒球はその成熟段階に応じ、骨髄芽球(myeloblast)、前骨髄球(promyelocyte)、骨髄球(myelocyte)、後骨髄球(metamyelocyte)に分類する。
なお、幼若好酸球については、分類が必要なときは好中球の核の形態変化に準じ、好酸性骨髄球、好酸性後骨髄球に分類する。
好塩基性特異顆粒を有する細胞は分類するのは難しいので好塩基球と一括して分類する。
病的な場合は別に規定する。
赤芽球はその成熟段階に応じ、前赤芽球(proerythroblast)、好塩基性赤芽球(塩基好性)(basophilic erythroblast)、多染性赤芽球(polychromatic erythroblast)、正染性赤芽球(orthochromic erythroblast)に分類する。
 
2)顆粒球系幼若細胞の分類基準
骨髄芽球(myeloblast)
直径::10〜15μm、N/C比:60〜80%程度、核の位置:やや中央に位置する、核クロマチン構造:網状繊細、核小体:あり、やや白みがかる。細胞質:青色、顆粒は認めない。
前骨髄球(promyelocyte)
直径::15〜20μm、N/C比:50〜70%程度、核の位置:偏在する、核クロマチン構造:繊細、骨髄芽球に比較しやや粗造、核小体:みとめることが多い、細胞質:青色、アズール顆粒(一次顆粒)を認める
骨髄球(myelocyte)
直径::12〜20μm、N/C比:30〜50%程度、核の形態:類円形、核クロマチン構造:粗造、核小体:なし、細胞質:特異顆粒(二次顆粒)を認める、青色が薄れ、アズール顆粒は残存しても良い。
後骨髄球(metamyelocyte)
直径::12〜18μm、N/C比:20〜40%程度、核の形態:陥凹を認める(ただし長径と短径の比は3:1未満)、核クロマチン構造:粗造一部塊状、核小体:なし、細胞質:ほとんどが特異顆粒で占められる
 
3) 赤芽球系幼若細胞の分類基準
前赤芽球(proerythroblast)
直径::20〜25μm、N/C比:60〜70%程度、核の位置:比較的中央に位置する、核クロマチン構造:顆粒状繊細、核小体: あり、濃く紫色に染まる細胞質:濃青色、狭く明瞭な核周明庭を認める
好塩基性赤芽球(basophilic erythroblast)
直径::16〜20μm、 N/C比:50〜60%程度、核の位置:比較的中央に位置する、核クロマチン構造:顆粒状、核小体:なし、細胞質:濃青色、前赤芽球に比べて濃い、核周明庭も認める。
多染性赤芽球(polychromatic erythroblast)
直径::12〜18μm、N/C比:40〜50%程度、核の位置:比較的中央に位置する、核クロマチン構造:粗大なクロマチン一部塊状、核小体:なし、細胞質:淡青色からヘモグロビン色調(橙紅色)が認める
正染性赤芽球(orthochromic erythroblast)
直径::8〜10μm、N/C比:20〜30%程度、核の位置:比較的中央に位置するが偏在することもある、核クロマチン構造:濃縮し構造は見られない、核小体:なし、細胞質:正常赤血球と同じ色調を呈する
 
【細胞画像の観察にあたって】
ここに掲載してある細胞は、以下のように抽出した。
観察に用いた細胞数は多く、その中から一致率順に細胞を並び替えて典型的な細胞から境界にある細胞まで示した。その一致率は以下の検討方法の様にして求めた。
70 %以上の一致率の細胞は典型的な細胞とする。70 %未満の細胞については成熟段階で境界の細胞であり、同定は観察した細胞の特徴を標準化案のゴッシク部分を主要な鑑別点として行う。再現性重視の立場から鑑別点を厳守する。
 
【検討方法】
1. 骨髄幼若細胞(顆粒球、赤芽球)の判定基準標準化に用いた標本
検討に用いた骨髄塗抹標本は、骨髄移植を行うために健常成人から採取された骨髄液を使用した。 使用にあたり提供者自身から本検討に用いることについて同意を取得した。
2. 検討方法
骨髄塗抹標本の適切な視野を円形のマーカーで囲み、その視野全体細胞の確認ができる倍率で写真を撮り、電子化した。同定を行う細胞に矢印をつけ番号を付与した。これを観察する委員に配布し、標本は持ち回りで観察、同定を行った。同定結果を集計し一致率を算出した。
3. 細胞同定一致率の算出方法
(1) その細胞を最も多くの委員が同定した細胞名を同定細胞名とした。
(2) 一致率(図に表記している数字)は同定細胞名を記載した委員の数を委員全体の数(11名)で除したものである。 もし委員が細胞名を記載しない場合(空欄)は一致率は低くなる。つまり同定した細胞名がすべて一致していても記載しない委員が多い場合は一致率は低下する。
(3) 委員会として、70 %以上の一致率があった細胞を典型的な同定細胞とし、 それ以下の一致率の細胞は成熟段階の境界にある細胞とする。